「おしどり手帳」
あるがまま、ありのまま
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作成日時 : 2006/05/28 05:13
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8月の水戸芸術祭で、舞台に立てることになった。
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地元では、ステータスでもある劇場での公演。
役者として演じることに興味を持ってはいたが、
如何せん、芝居は私にとって完全なるアウェーである。
今までと違い、経験も、知り合いも、とにかく何も切り札がない。
グラフィックデザイナーである肩書きなどは何の意味も持たないのだ。
そう、私の20代ラストを飾る「初挑戦」となるだろう。
まだ、下っ端のデザイナーだった頃。仕事が辛くて、本当にキツくて、
感受性のスポンジがカラカラに乾いていくのを感じていた。
そんな弱さや情けなさを認めたくなくて、刺々しく振る舞う自分がいた。
周りの全ての人間たちに負けてたまるかと、トイレに隠れて悔し泣きをした日々。
どんなに疲弊し消耗していても、デザインの現場に携わり続けることで、
この業界で生きる人間の一員であることを過剰に意識して来たような気がする。
それが「自分らしさ」だと思い込みたかった。
こうして10年近く時間が経ち、
あの頃、絶対に出来る筈はないと思っていたことを、
要求されるスキルに応じ、それなりにこなせるようになっていた。
すると、いつのまにか、
自分が出来ること以外、新たに何かを始めるなんておっくうだと、
現状維持に固執するようになっていた。
つまり、自分自身の変化をも私は望まなくなっていたのだ。
今、私が通っている事務所の女の子は、
私より年齢は7つも下なのだが、とても落ち着いていて、
思い遣りがあって、居心地の良い暖かな雰囲気を持っている。
それは、彼女自身の生まれ持った資質と環境もあるが、
ダンスと言う「生き甲斐」を持つことでもたらされた心身の安定から、
滲み出ているのかも知れない。
その、生き生きとした姿を、私は微笑ましく感じるのと同じくらい、
とても羨ましく思っていた。
30歳を目前にし、周囲は「早く子どもを作れ」と急かす。
もちろん、それを真っ向からヒステリックに否定するつもりはない。
ただ、他人の無責任な「価値観の押し付け」を窮屈に感じているだけで。
個々の人間が感じる幸福や充実感は、多種多様である。
それぞれが思い描く、理想やタイミングがあると思うのだ。
私は自分のペースを大切にしたい。
今、やりたいことを、できるうちにやってみたい。
自分のためにね。
仕事と家事と稽古の両立。
このペースに、正直まだ慣れていないので、体力的に辛いのも事実。
旦那に、不便や迷惑を掛けてしまうことも増えるだろう。
これが私にとって、最初で最後なのか、続いていくのかさえ分からない。
しかし、共演する役者さんやスタッフに混じって稽古に参加すると、
やることなすこと全てが新鮮で、毎日が楽しくてたまらない。
純粋に、楽しいと思える。生きていて、嬉しいと思う。
こんな充足感は、もう何年も味わっていなかった。
初めての芝居に対する、不安も疑問もプレッシャーも、
舞台を無事に終えたときの達成感を想像しただけで吹き飛ぶ。
心が踊る。
この「おしどり手帳」は、暫く休刊します。
舞台が終わったら、ちょっと逞しくなって戻って来ます。
その日まで、またね。
(チキン)
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